導入時(2023年8月)のインタビューはこちら
活用しているのは当社公式サイトのサポートページです。
バルミューダは、2003年に東京・武蔵野市で創業した家電メーカーです。スチームトースター「BALMUDA The Toaster」や扇風機「The GreenFan」など、お客様の生活に素晴らしい体験をお届けしたい、という想いで新たな価値を持つ家電を開発しています。家電製品だけではなく、ウェブサイトではその製品を使って得られる心地よさをお伝えしたり、キッチン製品を通じたおいしさをより感じていただけるようレシピなども自社で開発。製品をご購入いただいたお客様に、より良い体験をお届けしたいと考えている企業です。
季節変動があるお問い合わせボリュームに対し、お問い合わせが増えたときの受け皿になるチャネルを求めました。またデジタル時代でもあり、電話やメールに加えて、チャットボットなどのチャネルを持つことで、お客様に自己解決手段を提供することを目指しました。
当社に寄せられるお問い合わせの約7割が修理に関するものであるため、最初から修理受付のフロー効率化は構想にありました。修理受付に必要な情報は、ほとんど定型化できると思っていたため、電話やメールでのやり取りを省略できるのではないかと考えていました。もちろん、電話やメールでの対応には、柔軟に対応できるという利点があります。しかし、お客様の手間を最小限に抑えつつ、ツールを用いて効率化できる方法を検討していました。ただ、自社だけで適切な受付項目を作成するのは難しいと考えており、課題として残ったままになっていました。
他にも、コールセンターの適正規模を見極めるという目的もありました。当社では、季節によって必要なオペレーター数に変動が生じることが避けられないため、適正なオペレーター数を設定することが難しいと感じていました。人数を減らせば、ニーズが増えた際に迅速な対応ができなくなるリスクがある一方で、オペレーター数が多すぎると判明した場合でも、簡単には調整できないという課題がありました。このような状況の中でKARAKURIの導入は、コールセンターの適正規模を見極めるための新たな手段としても考えていました。
人を介さずに自動で修理受付を行うために考えたのが、チャットボットとFAQを利用するという二つの方法です。修理という観点からは、お客様がどういったことにお困りなのかを我々が使用する専門的な言葉ではなく、お客様の言葉で表現していただくのが良いと考え、まずチャットボットに修理受付フローを取り込むことを始めました。そして、チャットボット活用の中でお客様のニーズを汲むことによって、当社のFAQを見直し、FAQからも修理をお申し込みいただけるようにしました。
当初は、チャットボットとFAQを同時期にリリースしたいと考えていました。しかし、運用開始前にカラクリさんから「導入当初の回答率は約 60% 程度になる見込みです」と聞き、修理受付を前提としたリリースを行うにはリスクが高いと思い、2ヶ月以内に回答率を 80% 以上に引き上げるという目標を設定しました。そして、回答率が80%を超えた段階で、FAQからも修理受付ができるようにするという方針のもと、FAQのリリースを2ヶ月延期する判断をしました。
目標達成のために、一日約250件のトレーニング(AIの学習)を行いました。お客様に修理のお申し込みにたどり着いていただくため、質問の回答率向上に尽力しました。
チャットボットの設計では、カラクリさんと議論を重ねました。例えば、起動画面のボタン項目順について、当初は一般的なよくあるお問い合わせから始め、その後に修理の項目を置く予定でした。しかし、お客様が修理の申し込みにたどり着きやすくするためには、最初に「製品の不具合、修理について」を配置するのが最善という結論に至りました。
また、修理お申し込みフォームに人を介さずにたどり着いていただくために、製品型番を入力するとチャットボットが適切な情報を提示する機能をカラクリさんに開発していただきました。
製品型番の入力により、修理金額の表示やリペアセンターの情報との紐付けが可能になり、修理お申し込みフォームで製品型番の詳細を選択いただけるようになりました。修理受付のフローを効率化させるツールとしてチャットボットが効果的であることが分かり、とても印象的だった部分です。
加えて、お客様への伝え方という点でもカラクリさんから学んだことがあります。従来は、電話やメールでの長い丁寧な説明が良いと考えていました。しかし、チャットボットでは一画面で短く端的に示す方が伝わるといいます。チャットの特性を活かした伝え方の変更は、当社にとってインパクトのある作業でした。
はい、目標を達成することができました。その後は次のステップとして、FAQへの取り組みを進め、FAQへ誘導するための挑戦と改善を行いました。
具体的には、お客様がより早く修理お申し込みフォームにたどり着けるよう、FAQページの構成を変更しました。KARAKURI chatbotからよりも、KARAKURI smartFAQからの方が2回クリックが少なく進めるように設計しています。また、サポートページのデザインを見直し、チャットボットとFAQが目立つようにしました(図1)。その結果、お客様満足度の向上とともに、修理を申し込んでいただく割合も上昇しました。これは戦略としてうまくいったのではないかと思っています。
興味深いデータとして、一次申し込み(修理意思の確認)から本申し込み(決済を伴う申し込み)へと進んでいただける割合を、電話、チャットボット、FAQで比較すると、現在一番高いのはFAQでした。これはお客様が自分の目で見て確認した情報で進んでいくことに安心されるからではないかと分析しています。人を介さなくても安心して本申し込みに進んでいただける仕組みが、半年間の運用で確立してきたと感じています。
現在、チャットボットとFAQへのチャネルシフトが大きく進み、これら2つのチャネルの利用割合が全体の90%以上を占めるようになりました(図2)。修理という観点でも、90%近くが2つのチャネルからのお申し込みになっています(図3)。日中も電話やメールとほぼ同等ぐらい使われており、当社においては人がいない時間帯の代替手段ではありません。
チャットボット導入では、人をひとり新しく育てるという気持ちを大事にしてきました。即戦力としてすぐに大きな期待をかけるというよりは、時間をかけて「バルミューダならどう回答するか」を常に考えながら学習をさせてきたので、良い結果につながったのかもしれません。
この変化により、コールセンターの適正規模の見極めがついた他、アウトバウンドコールを行う余裕も生まれました。
プロダクトエンジニアは、お客様の声を製品開発に反映させたいと考えています。例えば、レベルスイッチの切り替え方について、カチャッと一つずつ切り換えるのが好ましいのか、スーッとスライドするのが良いのかなど、お客様の意見を聞きたいと相談を受けることがあります。こうしたお客様の声を製品開発に活かす体制が整いつつあります。また、当社のWebサイト上で確認することができる取扱説明書なども、お客様の声を基に記述を随時更新を行っています。
直近では、チャットボットを設置するページを増やして、よりお客様に気づかれやすく、利用されやすいようにしていきます。また今後アウトバウンドコールでは、バルミューダの製品をお客様により長く、繰り返し使っていただくことにつながるご案内もしていきたいと考えています。今までCSはスタッフ部門の位置づけでしたが、収益増に貢献できる組織へと進化していきたいと考えています。
バルミューダ株式会社
本社:東京都武蔵野市
設立:2003年3月
従業員数:137名(2023年12月末現在)
事業内容:製品の企画、デザイン、設計、開発、販売
企業公式URL:https://www.balmuda.com/
【取材に対応していただいた方々(取材当時の所属)】
バルミューダ株式会社 カスタマーリレーションマーケティング部 部長 越川 昌洋 氏
バルミューダ株式会社 カスタマーリレーションマーケティング部 湯澤 美幸 氏
バルミューダ株式会社
バルミューダ株式会社
本社:東京都武蔵野市
設立:2003年3月
従業員数:137名(2023年12月末現在)
事業内容:製品の企画、デザイン、設計、開発、販売